薬液タンクの解体では、タンク本体だけでなく、接続する配管やポンプ、ライニングなどにも薬液やスラッジが残っている可能性があります。残留物の性状によっては、漏えい、化学熱傷、中毒、火災、酸素欠乏などにつながるおそれがあるため、使用履歴やSDSを確認し、系統の隔離、残液回収、洗浄、必要なガス測定を行ってから解体へ進みます。
本記事では、プラントや工場で薬液タンクの撤去を検討する設備・環境安全担当者の方に向けて、薬液タンク解体の流れと、残留物の処理、安全管理、届出・手続きの注意点を解説します。
まず、タンクで使用・保管していた物質、残液やスラッジの有無、ライニングの材質を確認します。SDS、運転記録、図面、配管系統図を照合し、対象となる化学物質の危険性・有害性と、タンクにつながる配管や付帯設備の範囲を整理します。リスクアセスメント対象物を取り扱う作業では、ばく露や火災などのリスクを見積もり、換気、保護具、作業方法などの低減措置を決めます。
次に、作業方法と順序を定め、関係する作業者へ周知します。対象設備を停止して接続系統から隔離し、タンクと配管内の残液・スラッジを回収した後、内容物の性状に適した方法で洗浄・置換します。必要なガス濃度を確認してから、タンク本体、配管、ポンプ、架台などを順に解体・分別して搬出します。
労働安全衛生規則では、化学設備やその付属設備を分解したり、内部で作業したりする場合、作業方法と順序の決定、作業指揮者の選任、バルブの二重閉止や閉止板の設置、施錠・表示などが定められています。設備の種類や残留物に応じて、適用される措置を作業計画へ反映することが重要です。
残液やスラッジ、洗浄廃液は、名称だけで判断せず、pH、引火性、有害物質の含有状況などに応じて分類します。特別管理産業廃棄物に該当する例として、pH2.0以下の廃酸、pH12.5以上の廃アルカリ、揮発油類・灯油類・軽油類に該当する廃油があります。また、汚泥、廃酸、廃アルカリなどに重金属等が判定基準を超えて含まれる場合も、特別管理産業廃棄物として扱われます。
処理を外部へ委託する場合は、分析結果やSDSなどの情報を処理業者へ提示し、廃棄物の種類が許可範囲に含まれるか、受入条件を満たしているかを確認します。収集運搬・処分の委託契約を締結し、紙または電子のマニフェストによって処理状況を確認します。
薬液タンクの解体では、タンク本体のほか、配管、ポンプ、ライニング、保温材、汚染されたウエスなどが発生します。これらは材質や薬液の付着状況によって廃棄物の区分と受入条件が異なるため、残液・スラッジ・固形物を混載せず、解体前に分別方法を決めておきます。
金属製のタンクや配管も、薬液が付着したままでは再生利用先に受け入れられない場合があります。洗浄後の状態や処理業者の受入条件を確認し、再生利用できるものと処分が必要なものを分けます。建設工事として請け負った解体工事から発生する廃棄物は、原則として元請業者が排出事業者となるため、発注者・元請業者・処理業者の役割を契約前に確認しておくことが重要です。
電子マニフェストの使用が義務となるのは、一定量以上の特別管理産業廃棄物を排出するなどの要件に該当する事業場です。対象外の場合は紙マニフェストも使用できるため、電子マニフェストを全案件の法的前提とするのではなく、適用条件と社内運用に合わせて選択します。
プラント解体はただ壊すだけではありません。難処理廃棄物の適正な処理が求められる化学・電子機器製造プラントや、火気を扱わない解体方法が求められる火力発電プラント、環境問題への対応でリユースやリサイクルを求められる太陽光・風力発電プラントなど、プラント別に求められる専門性や技術があります。
以下のページでは、安全に産業廃棄物の処理ができる専門性の高いプラント解体業者をプラント別にご紹介します。
化学設備やその付属設備を分解する作業では、作業方法と順序、作業指揮者、系統隔離の方法を明確にします。残液の流入や薬液の逆流を防ぐため、対象となる配管のバルブ閉止、閉止板の設置、施錠・表示などを行い、想定外の漏えいやガスの発生が確認された場合は作業を中止します。
タンク内部がすべて法令上の酸素欠乏危険場所になるわけではありません。ただし、不活性ガスによる置換、内容物による酸素消費、換気不足などが想定される場合は、入槽前に酸素濃度と予測される有害ガスを測定します。酸素欠乏危険作業に該当する場合は、作業主任者の選任、作業環境の測定、換気、特別教育など、酸素欠乏症等防止規則に基づく措置が必要です。
可燃性物質を扱っていた設備では、残液の回収と洗浄の完了を確認し、作業開始時と作業中に可燃性蒸気・可燃性ガスの濃度を確認します。ガスが検知されなかった場合でも、配管やくぼみに残液が残っている可能性があるため、ガス測定だけで火気作業の可否を判断しないことが重要です。
タンクの洗浄で生じた排水は、残留薬液の種類と濃度を確認し、既設の排水処理設備で処理できるか、産業廃棄物として回収・委託するかを決めます。水質汚濁防止法の特定事業場から公共用水域へ排出する場合は排水基準が適用され、自治体の条例による上乗せ基準が設けられている場合もあります。
測定項目はpH、導電率、CODなどへ一律に固定せず、使用していた薬液、洗浄方法、排出先、適用される排水基準に応じて決めます。洗浄排水を安易に側溝や公共用水域へ流さず、排水処理設備の管理者や所管する行政機関へ処理方法を確認することが重要です。
揮発性のある物質や有害な蒸気が発生する可能性がある場合は、SDSとリスクアセスメントに基づき、密閉回収、換気、吸着などの対策を選定します。また、過去に漏えいがあった場合でも、薬液タンクの撤去だけで一律に土壌汚染状況調査が義務となるわけではありません。有害物質使用特定施設の廃止など、土壌汚染対策法上の調査契機に該当するかを確認します。
薬液タンクが消防法上の製造所・貯蔵所・取扱所に該当し、その用途を廃止する場合は、消防法に基づく廃止届が必要です。届出方法や添付書類は所管消防本部の運用を確認し、残存危険物の処理方法や撤去工程について事前に相談します。
PRTR制度の届出は、第一種指定化学物質を扱っているだけで一律に必要となるものではありません。対象業種、常用雇用者数、年間取扱量などの要件に該当する事業者が、対象物質の排出量・移動量を届け出ます。タンク撤去に伴って廃棄物として事業所外へ移動する対象物質がある場合は、既存の算定・届出へ含める必要があるかを確認します。
保温材、塗材などに石綿が使用されている可能性がある建築物や工作物の解体・改修工事では、石綿含有の有無について事前調査が必要です。一定規模以上の工事では事前調査結果の報告も必要となるため、対象となる工作物、請負金額、調査者の資格要件を確認します。
薬液タンクの解体は、使用履歴とSDSの確認、配管系統からの隔離、残液・スラッジの回収、洗浄、必要なガス測定を行ってから、タンク本体と付帯設備を分別・撤去する流れで進めます。
発注前には、残留物の性状と量、タンク内作業の有無、火気使用の有無、廃棄物の処理方法、排水・排気への対策、届出の要否を整理します。処理業者の許可範囲と受入条件、作業中止基準、発注者・元請業者・処理業者の役割を確認し、想定外の残液や漏えいが見つかった場合に作業を止めて再判断できる計画を作ることが重要です。
専門性の高い解体業者に依頼すべき代表的なプラントとして、難処理廃棄物を多く含む化学薬品を扱うプラントと、火気による大事故が懸念される火力発電プラント、そして環境問題への対応でリユースやリサイクルを求められる太陽光・風力発電プラントの3つが挙げられます。
ここではそれぞれのプラント解体に優れた技術を持つ、おすすめの解体業者をご紹介します。


